正式な文書の作成にボールペンを使ってはいけない時代の生まれです。中学から大学を出るまで万年筆を使い続けました。70年代初頭に就職したころからボールペンが使われ始めましたが、インクの出が均等でなくポタポタ漏れたり、時にかすれたり、ボールが外れて落ちたりしました。しかし間もなくボールペンは急速な進歩を遂げ、いつしか公式文書にも使われるようになりました。それと同時に、私もいつの間にか万年筆を使わなくなり、40年ほどが過ぎました。
還暦を過ぎた今、ふとしたきっかけでヴィスコンティのオペラ・エレメントを購入し使い始めたところ、アルファベットの筆記体を書く楽しさが蘇ってきて、セーラーのプロフィット21梨地長刀研ぎやパイロットのエラボー、そしてペリカン、PAXその他色々な万年筆を立て続けに入手し、40年間の空白を埋め合わせようとするかのように、ひたすら使ってみました。
私は自分で言うのも何ですが字は上手で筆を選ばない方ですが、やはり日本の筆記具の方が和文には適しているのではないかという先入観を持っていました。
ところが、このシェーファーの見た目のシンプルさと精悍さが気に入り使ってみたところ、その50倍の値段のヴィスコンティに優るとも劣らぬ書き味に思わずうなってしまいました。
考えてみれば、万年筆の価格は書き味の値段ではなく、他のファクターで決まるもののようです。高価なものの追求はつまるところ資金頼みですが、書き味の発見は金力とは別の要素を持っているようです。今後は視点をそちらに移しながら、字書きの旅を進もうかと思っています。
長々と書きました。お読み頂きありがとうございました。
シェーファーDELTA-GRIPブラック 、お奨めです。